【図解】経理の原則
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このページの最終更新日:2022/09/06

仕入控除税額の計算方法(一般課税)


このページの内容

重要なので繰り返しになりますが、
【原則3】
事業者(売主)は、課税売上に係る消費税額-課税売上に対応する課税仕入等に係る消費税額を納付する 
(消法5①、消法45、消法30、国税庁95%ルールQ&A基本(問1)
より)。
上記、原則の通り、「課税売上に対応する課税仕入等に係る消費税額」を計算する方法は、一般課税の個別対応方式または一括比例配分方式です。例外として、簡便計算である一般課税の全額控除と簡易課税が認められています。


このページでは、一般課税の個別対応方式・一括比例配分方式・全額控除の計算方法を説明します(以下目次の 部分)。上記の原則より、一般課税の個別対応方式や一括比例配分方式、課税売上割合を理解するのが、ポイントです。


【図解】消費税法 ( 目次抜粋 )



 書籍Aと書籍Bを小売販売、および、教科用図書を出版販売している会社を例にして説明します。当社が行った取引は、次の通りです(第3章では、この例を使って、各計算を行います)。
ここでは、以下の図の太枠部分を使って計算します。
消費税の計算方法-計算例(一般課税)


一般課税-必要な消費税区分と計算方法


  一般課税による仕入控除税額の計算(消法30①)
個別対応方式 一括比例配分方式 全額控除
必要な消費税区分 「課税売上に対応する」 「課税仕入等に係る消費税額」 を計算するために、以下の消費税区分を使います。


仕入取引 → 「課税仕入」、「課税貨物の引取」
 この2つの消費税区分は、 「課税仕入等に係る消費税額」 を計算するために使います。その他の非課税仕入、免税仕入(0%課税仕入)、不課税仕入は、消費税「額」に影響がないので使いません。

(計算方法)
「課税仕入等に係る消費税額」=課税仕入高×104/105(内税計算) +課税貨物の引取に係る消費税額
(消法30②)
※ここで、課税貨物の引取に係る消費税額も控除する理由は、以下のページをご覧ください。
  第2章3.輸入消費税の課税と納付

 さらに、一般課税の個別対応方式を選択する場合は、個々の課税仕入等(「課税仕入」と「課税貨物の引取」)を次の3つに用途区分しなければなりません。
(イ) 課税売上にのみ対応する課税仕入等(以下、課税売上対応仕入)
(ロ) 非課税売上にのみ対応する課税仕入等 (以下、非課税売上対応仕入)
(ハ) 課税売上と非課税売上に共通して発生する課税仕入等 (以下、共通対応仕入)


売上取引 → 「課税売上」、「免税売上(0%課税売上)」、「非課税売上」
 この3つの消費税区分は、課税仕入等に係る消費税のうち、 「課税売上に対応する」 分を計算するために使います。具体的には、課税売上割合を計算するためです(次の計算方法≪手順1≫参照)。
 なお、一般課税の全額控除の場合は、「課税売上に対応する」分を計算するためでなく、全額控除の適用要件を満たすかを判定するために、これらの消費税区分が必要となります。

※消費税区分の判定方法は、第2章をご覧ください。



計算方法
≪手順1≫課税売上割合の計算
 現実には、課税売上と非課税売上に共通して発生する課税仕入等に係る消費税等もあります(計算例では、書籍A販売と教科用図書C販売のために、管理部門が使う事務用品Dの購入に係る消費税です)。この中から、 課税売上に対応する 分を抽出するために、課税売上割合(課税売上高と非課税売上高に占める課税売上高の割合)を次の通り計算します(消法30⑥、消令48)。
 なお、前述の通り、一般課税の全額控除では、「課税売上に対応する」分を計算するためでなく、全額控除の適用要件を満たすかを判定するために、この課税売上割合が必要となります。

(計算方法)
         ( 課税売上高+免税売上(0%課税売上)高 )  ← (※2)
課税売上割合(※3)=--------------------------------------------------------     
         ( 課税売上高+免税売上(0%課税売上)高 ) + 非課税売上高 ← (※1)

 上記のそれぞれの売上高には、貸し倒れになった売上高を含みます。また、それぞれの売上に係る対価の返還等(返品、値引き、割戻し、割引)の金額は控除します(消令48①)

  (※1)分母 ・・・ 不課税売上以外の売上を集計します。不課税売上は、そもそも消費税法の適用対象外なので除外します。また、非課税売上のうち、有価証券、支払手段(通貨、小切手等)、金銭債権などの譲渡は、売上の二重計上を排除するため、除きます(消令48②)。
(※2)分子 ・・・ 課税売上に対応する課税仕入等に係る消費税は仕入税額控除できるので、課税売上と免税売上(0%課税売上)は分子に含めます。
一方、非課税売上は分子に含めません(非課税売上に対応する課税仕入等に係る消費税は仕入税額控除できないため)。
(※3)課税売上割合
の端数処理
・・・
原則として端数処理はしませんが、切り捨ては認められています(消基通11-5-6)。


(計算例)


       ( 書籍A 10,000 + 書籍B 2,000 )
課税売上割合 = ----------------------------------------------------------  = 80% 
       ( 書籍A 10,000 + 書籍B 2,000 ) + 教科用図書C 3,000



≪手順2≫仕入控除税額の計算
それぞれの方法で仕入控除税額を計算すると、次の通りになります。適用要件・メリットを確認の上、有利な方法を選択してください。

原則的な方法である個別対応方式と一括比例配分方式は、「 課税売上に対応する 課税仕入等に係る消費税額 」を次のとおり計算します。
個別対応方式は、(イ)課税売上対応仕入に係る消費税は個別に集計し、個別に集計できない(ハ)共通対応仕入に係る消費税だけに課税売上割合を乗じて、より正確に計算します。
一括比例配分方式は、課税仕入等に係る消費税額の全体に課税売上割合を乗じて、一括して計算してしまいます。
                        
個別対応方式 一括比例配分方式 全額控除
(計算方法)
仕入控除税額=
 (イ)課税売上対応仕入に係る消費税額
+(ハ)共通対応仕入に係る消費税額×課税売上割合 (消法30②)    
※この場合は、税務署長の承認を受ければ、「課税売上割合」に代えて、「課税売上割合に準ずる割合」を利用できる(消法30、消令47、消基通11-5-7、11-5-8) 。

(計算例)
(イ)(書籍Aの仕入 6,300+書籍Bの仕入 1,575)×4/105 + (ハ)事務用品Dの仕入 1,050×4/105×80% = 332




消費税の計算方法-計算図(個別対応方式)


※仕入に係る対価の返還等(返品、値引き、割戻し、割引)に係る消費税がある場合は、次の通り計算します(消法32①)。
仕入控除税額=
(イ)(課税売上対応仕入に係る消費税額-課税売上対応仕入に係る返還等に係る消費税額)+
(ハ)共通対応仕入に係る消費税額×課税売上割合-課税売上対応仕入に係る返還等に係る消費税額×課税売上割合)
  

(計算方法)
仕入控除税額=
課税仕入等に係る消費税額 × 課税売上割合 (消法30②)




(計算例)
課税仕入等の合計額 11,025 × 4/105 =420  ←ここで1円未満の端数切り捨て

420×80%=336 ←ここで1円未満の端数切り捨て

消費税の計算方法-計算図(一括比例配分)

※仕入に係る対価の返還等(返品、値引き、割戻し、割引)に係る消費税がある場合は、次の通り計算します(消法32①)。
仕入控除税額=
課税仕入等に係る消費税額 × 課税売上割合-課税仕入に係る返還等に係る消費税額×課税売上割合)
  


(計算方法)
仕入控除税額=
課税仕入等に係る消費税額

    




(計算例)
課税仕入等の合計額 11,025円×4/105  =420 ←ここで1円未満の端数切り捨て




消費税の計算方法-計算例(全額控除)

※仕入に係る対価の返還等(返品、値引き、割戻し、割引)に係る消費税がある場合は、次の通り計算します(消法32①)。
仕入控除税額=
課税仕入等に係る消費税額 -課税仕入に係る返還等に係る消費税額

※確定申告した後に、個別対応方式または一括比例配分方式の選択をやり直すことはできません(消基通15-2-7(注))


上記と関連する内容
 課税売上に係る消費税額・仕入控除税額の計算方法は、比較しやすいように、計算に必要となる消費税区分 → 計算方法 の順番で表にしています。以下のページでご覧になれます。
 ・第3章 2(3)課税売上に係る消費税額 の計算方法
 ・第3章 2(3)仕入控除税額 - 一般課税の計算方法 (上記表の先頭へジャンプします。) 
 ・第3章 2(3)仕入控除税額 - 簡易課税の計算方法



個別対応方式における用途区分の判定方法


個別対応方式では、個々の課税仕入等(課税仕入と課税貨物の引取)について、以下の通り、用途区分を判定する必要があります。


用途区分の判定方法
 個々の課税仕入等について、どんな売上を予定しているか(目的)によって、必ず、次の(イ)(ロ)(ハ)のいずれかに分類します(消法30②、消基通11-2-18)。 (「第2章1.消費税区分」の判定と同じように、個々の取引ごとに判定します。)

用途区分
(イ)課税売上にのみ対応する課税仕入等
(以下、課税売上対応仕入)
〇課税売上のための 原価(仕入費用、原材料、備品等、倉庫料、運送費等)(消基通11-2-12)
〇課税売上のための 一般管理費・営業外費用・・・広告宣伝費、支払手数料、倉庫料、運送費等)(消基通11-2-12)
〇国外において行う資産の譲渡等のための 課税仕入等(消基通11-2-13)
(ロ)非課税売上にのみ対応する課税仕入等
(以下、非課税売上対応仕入)
〇土地売上のための 造成費用、仲介手数料等(消基通11-2-15)
〇居住用住宅貸付のための 建築費用等(消基通11-2-15)
〇診療サービス提供(健康保険法の規定による)のために必要な 医薬品等
(ハ)課税売上と非課税売上に共通して発生する課税仕入等
(以下、共通対応仕入)
(イ)(ロ)以外の課税仕入等です。
〇事業全体に共通発生する費用・・・総務・経理・人事等の本社一般管理費(賃借料、水道光熱費、通信費、事務用品等)
〇分譲住宅売上のための 造成費用、仲介手数料等
〇不課税売上のための 課税仕入(消基通11-2-16)
〇課税期間の末日までに用途が決まらない課税仕入等
〇上記他、(イ)(ロ)に区分することができない課税仕入等

※(ハ)共通対応仕入について、原材料、包装材料のように生産実績その他の合理的な基準により、(イ)(ロ)に区分できる場合は、これも認められています(消基通11-2-19)。なお、届出は必要ありません。



用途区分の認識時期
 課税仕入等を行った日で用途区分を判定します(「第2章2(1)消費税の認識時期」のタイミングと同じです)。このタイミングで用途区分が明らかでない場合、課税期間の末日までに用途区分が決まれば、その区分を使うことができます(消基通11-2-20)。
なお、合理的な用途区分をした後、実際には別の用途で使用されたとしても、さかのぼって判定をやり直す必要はありません(消基通11-2-12、消基通11-2-20)。


(用途区分の例)
〇販売を予定して仕入れた商品が、結果として販売できずに廃棄された場合 
→仕入を行った日の予定で判断するから、仕入費用は、(イ)課税売上対応仕入となります(消基通11-2-11)。実際にどうなったのかは関係ありませんので、(ハ)共通対応仕入とはなりません。

〇販売を予定して土地を取得したが、一時的に資材置き場として使う場合 
→最終的には土地の販売を予定しているから、土地の購入費用は、(ロ)非課税売上対応仕入になります。一時的な目的は関係ありません。






Ⅲ消費税法
消費税法の基本的な考え方(【原則1.2.3】)をベースにして、体系的にご説明します。これらを確認したい方は、特に、 と記載されたページをご覧ください。
また、基本的には、図や表で整理していますので、必要な情報をすぐに確認いただけます。

 

Ⅰ個人事業主の確定申告

Ⅱ【図解】個人事業主・法人の会計

Ⅳ会計ソフト比較解説

Ⅴ個人事業主・法人におすすめのフリーソフト・サービス

Ⅵ自作フリーソフト(無料)[二刀流宛名印刷]








































































































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