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このページの最終更新日:2022/09/06

商品仕入と売上の仕訳基本|勘定科目の違いや三分法

このページの内容

まずは、実務で一般的な仕訳の仕方である三分法を中心に説明します。
重要なポイントは、会計の基本的な考え方(発生主義・費用収益対応の原則・実現主義)を理解した上で、三分法は、期中に簡便さと効率性を重視しているだけという点です。
売上は、商品を引渡した個数分を計上します。この売上に対応する分(当期消費分)だけ、売上原価を計上します(発生主義と費用収益対応の原則による )。そして、期末在庫は、消費していないので資産計上します。


ページ後半では、理論的である売上原価対立法、分記法についても、ご紹介します。

どの方法を使っても、発生主義と費用収益対応の原則に従うことになりますので、最終的には同じ結果になります。




   
ここでは、下図の (例1)期首在庫 →(例2)仕入 →(例3)売上を使って、それぞれ仕訳をご説明します。


以下は、右へスクロールできます⇒
商品仕入と売上の仕訳-売上は、商品を引渡した個数分を計上します。この売上に対応する分(当期消費分)だけ、売上原価を計上します(発生主義と費用収益対応の原則による )。そして、期末在庫は、消費していないので資産計上します。

売上と売上原価の計上の仕方 とても重要!

会計基準では、最終的に、上図の通り、売上と売上原価(費用)を計上します。
詳細は、以下の通りです。
内容
売上 実現主義の原則により、 当期、商品引渡した個数分を売上計上します。

費用 発生主義と費用収益対応の原則により、 当期、商品を消費した(=当期商品売上に対応した)個数分だけ費用計上します。この費用を売上原価といいます。(仕入分を費用計上ではありません)

そして、 当期に消費していない(=当期商品売上に対応しない)残りの在庫は、資産計上されます。

上記、発生主義と費用収益対応の原則による費用計上の考え方は、次の通りです。
内容
発生主義 これは、商品やサービスの消費時に費用計上するという原則です。
⇒商品販売では、相手に商品を引渡したとき、費用計上することになります。つまり、商品の引渡時に、売上計上すると同時に、手元の商品がなくなることによる価値減少分を損失計上します。

費用収益対応の原則 これは、当期収益に対応する分を費用計上するという原則です。
⇒上図の例では、当期、商品1個を売上げた場合、これに対応する1個分を費用計上して、当期の損益計算をします。



※費用や売上計上の原則・考え方は、損益計算書原則(発生主義・実現主義・費用収益対応の原則)ページをご覧ください。



  

三分法による仕訳

商品の仕入・売上取引の仕訳方法は、何種類かありますが、一般的には、三分法を使います。
三分法とは、以下3つの勘定科目を使って仕訳する方法です。
・「繰越商品」勘定(資産)
・「仕入」勘定 (費用)
・「売上」勘定(収益)

三分法では、期中は簡便な処理をします。そして、期末決算時に、前述の通り、当期消費した(=当期売上に対応した)個数分だけ、売上原価(費用)計上します。個人事業主の確定申告でも、同じ仕訳になります。


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それでは、仕訳の説明をしていきます。
仕訳&元帳
期首 (例1)期首は、商品在庫が1,600円(800円×2個)あった。

≪元帳≫
商品仕入の帳簿づけ1-個人事業主と法人会計

仕入時 (例2)商品2,000円(1,000円×2個)を掛で仕入れた。

≪仕訳≫
期中は、簡便に仕入勘定だけ使います。
借方 金額 貸方 金額
仕入 2,000 買掛金 2,000
※理論的には、後述する売上原価対立法のように、商品 2,000 / 買掛金 2,000 と仕訳して、資産計上すべきです。これは、発生主義と費用収益対応の原則により、当期商品を消費していないためです(=まだ売上ていないためです)。
しかし、三分法では、簡便に仕入勘定を使います。上記の通り、この時点での勘定科目の仕入は、資産勘定である商品を意味しています。

 
≪元帳≫
上記仕訳の結果、元帳は以下の通りになります。
商品仕入の帳簿づけ2-個人事業主と法人会計

売上時 (例3)商品1,500円(1,500円×1個)を掛売上げした(期首在庫分を売上げたと仮定)。

≪仕訳≫
売上時は、以下の通り、売上計上だけします。
借方 金額 貸方 金額
売掛金 1,500 売上 1,500
※理論的には、後述する売上原価対立法のように、以下の通り、売上と同時に費用計上もすべきです。これは、発生主義と費用収益対応の原則により、当期商品を消費しているためです(=当期売上に対応する費用を計上するためです)。
 売掛金 1,500 / 売上 1,500
 売上原価 800 / 商品 800
しかし、三分法では、簡便に売上だけ計上します。仕入勘定は、変更しません。

 
≪元帳≫
商品仕入の帳簿づけ3-個人事業主と法人会計


期末決算 前述の通り、期末決算時に、当期消費した(=当期売上に対応した)1個分だけ、売上原価(費用)を計上するようにします。
現在、期末決算時点の仕入勘定は、当期仕入2個分2,000円になっています。
そこで、≪仕訳①②≫をして、仕入勘定で売上原価を計算します。

≪仕訳①≫
期首商品残高を仕入へ振替
仕入勘定で売上原価を計算するために、まずは、期首商品2個分1,600円を仕入勘定に振替えます。
借方 金額 貸方 金額
①仕入 1,600 繰越商品 1,600
       
≪元帳≫
商品仕入の帳簿づけ4-個人事業主と法人会計
       
≪仕訳②≫仕入から繰越商品へ振替
仕入勘定のうち、期末商品3個分2,800円は資産なので、仕入から繰越商品に振替えます。
 ※先入先出法により、先に仕入れた期首商品(単価800円)から売上したものとして、計算しています。
借方 金額 貸方 金額
②繰越商品 2,800 仕入 2,800
すると、仕入勘定の残高は、当期消費した(=当期売上に対応した)1個分800円になります。


このように、会計基準では、発生主義と費用収益対応の原則により、以下の取扱いになります。
・当期消費した(=当期売上に対応した)商品の1個分だけ、売上原価(費用)計上する
・当期消費していない(=当期売上していない)残りの商品3個分は、資産計上する


※上記①②の仕訳は、売上原価を「仕入」勘定で計算する方法です。この他、売上原価を「売上原価」勘定で計算する方法もあります。

B/S
P/L表示

商品仕入の帳簿づけ5-個人事業主と法人会計
※貸借対照表では、繰越商品ではなく商品という名称になります。
※損益計算書では、仕入ではなく、売上原価という科目で表示します。

参考
(例2)の掛仕入した後、仕入先へ買掛金を振込した場合は、買掛金 2,000 / 普通預金 2,000 のように仕訳します。
また、商品購入のために前払(手付金)したり、備品などを購入した場合の勘定科目は、債権・債務の取引をご覧ください。
(例3)の掛売上した後、得意先から入金があったら、普通預金 1,500 / 売掛金1,500 のように仕訳します。
また、前払(手付金)を受け取ったり、備品などを売却した場合の勘定科目は、債権・債務の取引をご覧ください。



           

売上原価対立法・分記法による仕訳

参考として、先ほどと同じ例を使って、売上原価対立法と分記法をご紹介します。
特に、売上原価対立法は、取引時点で、発生主義と費用収益対応の原則に基づく理論的な方法ですので、しっかり、確認しておくとよいと思います。

どの方法を使っても、発生主義と費用収益対応の原則に従うことになりますので、最終的には同じ結果になります。
売上原価対立法 分記法
処理方法 以下3つの勘定科目を使って仕訳する方法です。
・「商品」勘定(資産)
・「売上原価」勘定(費用)
・「売上」勘定(収益)
以下3つの勘定科目を使って仕訳する方法です。
・「商品」勘定(資産)
・「商品販売益」勘定(収益)
メリット
・デメリット
○発生主義と費用収益対応の原則に基づく理論的な方法です。
×商品引渡し時に、売上原価を調べなければならないので、手間がかかります。

×利益が純額だけしか分からないので、総額主義の原則に反します。
×商品引渡し時に、売上原価を調べなければならないので、手間がかかります。

期首 (例1)期首は商品在庫が1,600円(800円×2個)

(例1)期首は商品在庫が1,600円(800円×2個)

仕入時 (例2)商品2,000円(1,000円×2個)を掛で仕入れた
借方 金額 貸方 金額
商品 2,000 買掛金 2,000
発生主義と費用収益対応の原則により、商品を消費していないため(=売上げていないため)、商品を資産計上します。

(例2)商品2,000円(1,000円×2個)を掛で仕入れた
借方 金額 貸方 金額
商品 2,000 買掛金 2,000

売上時 (例3)商品1,500円(1,500円×1個)を掛売上げした(期首在庫分を売上げたと仮定)。
借方 金額 貸方 金額
売掛金 1,500 売上 1,500
売上原価 800 商品 800
1行目は、三分法と同じ仕訳です。
2行目で、発生主義と費用収益対応の原則により、商品を1個消費したため(=売上に対応する費用を計上するため)、この売上原価を費用計上します。

(例3)商品1,500円(1,500円×1個)を掛売上げした(期首在庫分を売上げたと仮定)。
借方 金額 貸方 金額
売掛金 1,500 商品 800
商品販売益 700
決算整理仕訳 なし
※期中に適切な処理をしているので、ここで仕訳は必要ありません。
なし
B/S
P/L表示
商品仕入の帳簿づけ6-個人事業主と法人会計
※貸借対照表では、繰越商品ではなく商品という名称になります。
※損益計算書では、分記法の場合、上記「売上高」1,500と「売上原価」800が相殺されて、「商品販売益」700が収益に表示されます。
の取扱いは、いずれの方法でも三分法にある記載と同じです。消費税区分は、個々の取引に対して判定しますので、仕訳の仕方によって、消費税区分が変わりません。


※仕訳のやり方や考え方を確認したい方は、仕訳の仕方 ページをご覧ください。
仕訳をするのは、貸借対照表と損益計算書を効率的に同時作成するためです。仕訳は、仕訳図に当てはめて起こすと分かりやすいです。なぜ仕訳が効率的なのか、初心者の方に分かりやすく図解します。
-Step1-
マウス置くと拡大 

※費用や売上計上の原則・考え方は、損益計算書原則(発生主義・実現主義・費用収益対応の原則)ページをご覧ください。



物(商品・消耗品・固定資産)の購入・費用計上の基準と仕訳例比較



物の購入・消費時の基本的な考え方は、下表のとおり、商品の仕入でも、消耗品の購入でも、固定資産(建物・備品・ソフトなど)でも、すべて同じです。ですから、必ず理解いただくとよいと思います。

基本的には上記の考え方ですが、資産によって仕訳のやり方が異なったり、資産の金額的な重要性が低ければ簡便な処理が認めらていたり、固定資産など資産の特性に応じて細かく計算方法が決めらています。混乱しやすいのでご注意ください。


物の購入における費用計上の基準と仕訳例の比較
以下は、右へスクロールできます
棚卸資産   固定資産
商品の仕入・売上
 
消耗品の購入
 
有形固定資産と無形固定資産の購入
(建物・備品・ソフトなど)
 
原則方法
仕訳例の違い
原則方法は、まず期中仕入計上して、
期末時に商品と費用(売上原価)を計上します(下図の三分法)。
原則方法は、まず期首と期中購入分を費用計上して、
期末時に資産計上します(下図)。

ですが、実務では、通常、例外処理の費用計上だけで完了です。
まず期中購入時に資産計上して、
期末時に費用(減価償却費)を計上します(下図)。
※基本的な考え方は同じですが、仕訳方法に違いがありますので混乱しないようにご注意ください。
-商品仕入と売上の仕訳 -三分法-
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-消耗品費(経費)と貯蔵品の仕訳 -【原則処理】購入時に消耗品費(費用)とする方法-
マウス置くと拡大 
-有形固定資産と無形固定資産の減価償却-
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法人の会計基準 当期消費分(=当期引渡し分)を費用計上
原則:当期消費分を費用計上
例外:重要性が乏しいものは、購入時または払出時に費用計上可。実務では、通常こちらです。
当期消費分を費用計上(減価償却という)。
有形固定資産を使用することにより、徐々に価値が低下します。そこで、有形固定資産の利用年数に渡って、その取得原価を各会計年度に費用配分します。

金額が大きく、消費具合が見えないので、細かく計算方法が決められています(減価償却といいます)。
例外:利用年数および取得価額に応じて、一括して、費用[必要経費]計上できる
個人事業主の確定申告
※基本的に法人と個人事業主の処理は同じです。
当期消費分(=当期引渡し分)を費用計上
原則:当期消費分を費用[必要経費]計上
例外:継続して費用[必要経費]計上などの要件を満たす場合は、購入時に費用計上可。実務では、通常こちらです。
当期消費分を費用計上(減価償却という)
金額が大きく、消費具合が見えないので、細かく計算方法が決められています(減価償却といいます)。
例外:利用年数および取得価額に応じて、一括して、費用[必要経費]計上できる








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