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このページの最終更新日:2024/02/02

【図解】複式簿記の仕訳とは?仕訳のやり方(借方・貸方のコツ)

このページの内容


貸借対照表と損益計算書を効率的に同時作成できるように、日々、すべての取引を仕訳して記録し、総勘定元帳へ転記の2段階で各勘定科目を集計します。
このページでは、仕訳は、どのようにすればよいのか、また、なぜ仕訳をすると効率的なのかを中心にご説明します。

身近な例ですと、例えば、宅購入時、所有している住宅を資産に計上して、住宅ローンの残高も分かるように、仕訳を使って記録していきます。





このページでは、次の取引例を使って仕訳の仕方を説明します。

(例1) 4/1 取引先に対する 貸付金の利息2万円現金で受け取った。



  

仕訳の仕方


仕訳とは

まずは、完成した仕訳をご覧ください(単位は、万円です)。

仕訳図-法人と個人事業主の会計

(※1)勘定科目とは、「現金」や「受取利息」などの項目のことです。
初めての方は、現金や預金など簡単なところから先に埋めていくと分かりやすいです。

(※2) シンプルなケースは上記のように1行です。
取引によっては、以下の例のように、仕訳が複数行になることもあります。
この場合も、借方(左)と貸方(右)の合計金額は必ず一致します(詳細は後述しますが、貸借対照表の貸借が一致するからです)。

(例)社員に、給与25万円と通勤手当2万円を支給、所得税5万円を差し引いて22万円を振込した場合
借方 金額 貸方 金額
給料 25 普通預金 22
旅費交通費 2 預り金 5






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仕訳の仕方

仕訳に慣れていない方は、以下を並行して行うとよいと思います。

【1つ目の方法】自分で考えて仕訳をすること …仕訳の理解が深まり応用がきくようになります

【2つ目の方法】よく出てくる取引の仕訳パターンを覚えること …効率的に仕訳作業を進められます



それでは、順番にご紹介します。

【1つ目の方法】自分で考えて仕訳をする


最初は大変ですが、以下のような仕訳の仕方を身につけると、貸借対照表や損益計算書の理解も深まります。
貸借対照表や損益計算書の見方が分かるようになったり、法人であれば、法人税法の別表4(税務上の損益計算書)、別表5(税務上の貸借対照表)との違いを理解するのにも役立ちます。

貸借対照表の5要素である資産・負債・資本・収益・費用の増減があったとき、下図の通り、次の順番で考えていきます。

   Step1  取引の分解 ・・・ ① → ② の順番で、分解します。 
     
   Step2  勘定科目と左右の決定 ・・・ ① → ② → ③ → ④ の順番で、貸借対照表の図にあてはめます。




以下は、右へスクロールできます⇒
複式簿記の仕訳とは?基本的な仕訳のやり方(借方・貸方のコツ)


※上図の貸借対照表・損益計算書に、ご担当されている業務で、よく使う勘定科目に印をつけていただくと使いやすいかと思います。上図には、よく使われる勘定科目は、おおよそ記載しています。

※資産・負債・資本・費用・収益の増減は、一般的には、次のように整理されます。
こちらでも、ご紹介しました上図と全く同じことですので、このように覚えてもらっても全く問題ありません。
貸借対照表の要素
資産の増加
負債の減少
資本の減少
資産の減少
負債の増加
資本の増加
損益計算書の要素
費用の増加
(儲けの減少は、マイナスの儲けが増加と考えて、会計では費用の増加といいます)
収益の増加
(儲けの増加のこと)

上記の場合は
借方(左)に書く

上記の場合は
貸方(右)に書く

※資産・負債・資本・費用・収益の詳細は、貸借対照表と損益計算書とは・書き方・読み方をご覧ください。

※日々の仕訳、期末決算時に、損益計算書の作成後、資本振替の流れは、複式簿記による帳簿付け全体の流れページ(後半)をご覧ください。


【2つ目の方法】よく出てくる取引の仕訳パターンを覚える

初心者の方は、毎回、自分で考えて仕訳すると大変です。
そこで、以下のような実務でよく出てくる仕訳パターンは覚えてしまうと、効率的です。慣れてくると感覚的に仕訳が思い浮かぶようになってくると思います。


●よく出てくる取引
現金・預金が増減する取引は、多いです。
まずは、現金・預金が増加したら借方(左)、逆に、減少したら貸方(右)に書きます。次に、相手科目を埋めていく流れで仕訳すると分かりやすいです。



●よく出てくる5要素(資産・負債・資本・収益・費用)のパターンは、以下の通りです。

パターン 取引例
①資産の増加 と 資産の減少 預金の預け入れなど 

(例)
借方 貸方
普通預金×××
(資産の増加)
現金 ×××
(資産の減少)


基本的に事業主は利益を獲得するための活動を中心にしているわけですから、以下のような②費用、③収益の勘定科目が増減する取引は多くなります。
パターン 取引例
②費用の増加 と 資産の減少 事業に係る経費の支払など

(例)
借方 貸方
旅費交通費×××
(費用の増加)

通常、費用科目はたくさんあるので、迷う方も多いと思います。ここは、Webなどを検索などすると良いです。
現金 ×××
(資産の減少)

③資産の増加 と 収益の増加 売上計上など

(例)
借方 貸方
現金 ×××
(資産の増加)
売上 ×××
(収益の増加)

初めての方は、仕訳に慣れるまでは、Webなどで取引を検索して仕訳するのが間違いないです。



初めての方向けに、会計ソフトによっては、取引の種類を選択すると、仕訳が作成できる機能があります。こちらを活用して仕訳に慣れていくのもよいと思います。


  

総勘定元帳への転記

仕訳を起こしたら、総勘定元帳へ転記して、勘定科目ごとに集計します。

貸借対照表と同じように、総勘定元帳も、資産の残高は借方(左)、その調達方法の残高は貸方(右)になります。
だから、上記の仕訳をそのまま各勘定科目に、金額を記入します。この際、日付と相手科目も記入します。

仕訳
     現金 2                  受取利息 2        

現金勘定の借方に転記 

 受取利息勘定の貸方に転記
総勘定元帳
現金
4/1 2  残高 2
   
受取利息
 残高 2 4/1 2
   

※会計ソフトを使うと、仕訳を入力したタイミングで自動的に転記してくれますので、この作業は不要です。


           

仕訳の考え方


前述の方法がしっくりこない方、理解を深めたい方のために、貸借対照表と損益計算書の同時作成という目的から、仕訳の仕方を説明します。
初めての方は、仕訳に慣れた頃、または、1年通じて決算を経験した頃に確認いただくと理解が深まると思います。

ここでは、先ほどと同じ例を使います。

(例1) 4/1 取引先に対する 貸付金の利息2万円現金で受け取った。




手順1  貸借対照表を作成するための記帳
現金だけに注目する単式簿記(家計簿・小遣い帳と同じ)ですと、以下の記帳になります。
収入:+、支出は-
単位:万円
現金のみ記帳
日付 入金・支出 残額
4/1 2
(現金が2万円増加)
2
(現金残高は2万円)

このように現金の増減があったら記帳すると、現金の残高はすぐわかります。


しかし、次のような会社が持っている資産、借金の残高、どれだけ儲けたのかなどは、記録されないので、後で簡単に確認できません。

●会社の大切な資産である建物や備品などはどれだけあるか(下図借方[左側]の資産部分)。
 身近な例でいえば、住宅や電化製品を購入時に、これらも価値があるので、それぞれ残高を記録しておきます。

●借金の残高はどれだけあるか(下図貸方[右側]の負債部分)。
 これを記録すれば、返済しなければならない金額がすぐ分かります。また、会社がどれだけリスクを抱えているかが分かります。
 身近な例でいえば、住宅や電化製品などを住宅ローンやクレジットカードで購入したとき、利用明細をとっておいたり、メモしておく方もいるかと思います。住宅ローンの残高は、あとどれくらい残っているか気になります。これらの借金の残高を簡単に把握できるようにして、将来、支払いを忘れないようにすることと同じことです。

●株主出資の残高はどれだけあるか(下図貸方[右側]の資本金部分)。
 これを記録すれば、将来、返済義務がないので、事業主にとって安全性が高いことが分かります。
 身近な例であれば、住宅購入時に親から贈与を受けたり、結婚や入学祝いをもらったとき、将来返済しなくてよいので安全であることを記録しておきます。

●事業主がどれだけ儲けたのか(下図貸方[右側]の繰越利益剰余金部分)。
 事業主は営利活動をしているわけですから、債権者・株主・経営者すべてが知りたい情報です。



そこで、以下の通り、複式簿記により貸借対照表を作成する必要があります。


■仕訳で記録する内容
この貸借対照表を作成するためには、まず、以下①⇒②を記入する必要があります。
すると、現金 2 繰越利益剰余金 2 と記帳されて、現金の増加だけでなく、繰越利益剰余金(儲け)の増加も記帳できます。 


以下は、右へスクロールできます⇒
複式簿記の仕訳とは?仕訳と貸借対照表の記帳の関係(借方・貸方のコツ)


(※)借方(左)と貸方(右)のどちらに書くか決める
貸借対照表では、資産の残高は借方(左)、その調達方法の残高は貸方(右)と決めています。そのため、仕訳では、資産の増加が借方(左)、資産の調達方法の増加が貸方(右)になります。

このように、資産とその調達方法の側面から仕訳していけば、貸借対照表が作成できます。
貸借対照表は、株主・債権者・経営者に役に立つように、会社の安全性(下図の赤青部分)、成長性(下図の紫部分)、過去から今までの収益性(下図の茶色部分)が分かるように、表示順序なども工夫して決められています。これを理解すると、日々起こす仕訳の意味だけでなく、貸借対照表が単なる分かりにくい勘定科目の羅列でないことが分かります。さらに、投資などで出てくる分かりにくい経営分析指標(自己資本比率、流動比率、ROEなど)の意味が、すっきりわかるようになります。詳細は、貸借対照表と損益計算書とは・書き方・読み方をご覧ください。
貸借対照表とは何か・書き方・読み方-個人事業主の確定申告・法人会計
マウス置くと拡大 


※この手順1で自分の儲け(法人の場合、貸借対照表では、繰越利益剰余金といいます)が増減しない場合は、ここで仕訳の作成完了です。






手順2 損益計算書も同時作成するための記録
上記手順1で、自分の儲け(法人の場合、貸借対照表では、繰越利益剰余金といいます)が増減する場合は、この手順2でご説明するように損益計算書も同時作成できるように記録してあげる必要があります。経営者・債権者・株主みんなが、どうやって儲けたのか、細かく知りたいからです。


全ての取引で上記手順1のような仕訳をしても、期末決算で、「繰越利益剰余金」の差額を計算すれば、当期利益を計算できます(これを財産法といいます)。
 「繰越利益剰余金」の期末残高 2万円 - 「繰越利益剰余金」の期首残高 0万円 = 当期利益 2万円



しかし、(例1)の貸付利息、商品の売上、保険金の受取など、事業主の当期の儲けが増減したときは、常に「現金 ××× / 繰越利益剰余金 ×××」という仕訳になるため、後で仕訳を見たとき、当期の儲けの内訳が分かりません。→下図①参照
そこで、損益計算書も同時作成できるように、事業主の当期の儲けが増減したときは、その内訳である収益・費用科目を使います(損益法)。→下図②参照
たとえば、貸付金の利息であれば「受取利息」、商品の売上は「売上」、保険金の受取は「雑収入」などの勘定科目を使い、この勘定科目ごとに集計していきます。→下図③参照

複式簿記の仕訳とは?仕訳と損益計算書の記帳の関係(借方・貸方のコツ)




このように記録しておけば、後で仕訳を見たとき、受取利息により儲けたことがすぐに分かります。


以上ように、資産とその調達方法の側面から仕訳していけば、貸借対照表が作成できます。
損益計算書は、株主・債権者・経営者に役に立つように、成長性(下図の紫部分)、当期の収益性(下図の茶色部分)が分かるように、表示順序なども工夫して決められています。これを理解すると、投資などで出てくる分かりにくい経営分析指標(経常利益率、営業利益率など)の意味が、すっきりわかるようになります。詳細は、貸借対照表と損益計算書とは・書き方・読み方をご覧ください。
損益計算書とは何か・書き方・読み方-個人事業主の確定申告・法人会計
マウス置くと拡大 


※このように仕訳すると、繰越利益剰余金ではなく費用・収益科目を使うと、取引時に貸借対照表の繰越利益剰余金(自分で儲けた利益の累積)が増減しません。
期末決算に、損益計算書の作成が完了したら、以下の仕訳を起こし、利益全額を 一括して繰越利益剰余金に振り替えます(資本振替)。
借方 金額 貸方 金額
受取利息 2 繰越利益剰余金 2

この仕組みが、初めての方にとって仕訳を分かりにくくしている点だとも思いますが、貸借対照表と損益計算書を効率的に同時作成できるよく考えられた仕組みだと思います。
この手順2は、少し難しいと感じる方は、まずは、前述の通りよく出てくる仕訳のパターン(費用・収益が増減すパターン)として覚えて、慣れてからまた確認していただければよいと思います。


詳細は、複式簿記による帳簿付け全体の流れページ(後半)をご覧ください。また、その他の仕訳例も確認できます。


※財産法は、財産的な裏付けをもった利益としてのメリットを持つことから、損益法と財産法は、相互補完的に機能しています。



【ご参考】他の記録方法について

先ほどの(例)では、次の仕訳を起こしました。
借方 金額 貸方 金額
現金 2 受取利息 2

では、次のように取引を記録しても、貸借対照表と損益計算書を作成できるでしょうか?

(記入例1)
 下表のように、各勘定科目の増減だけ単純にメモしていく。
項目 金額
現金 +2
受取利息 +2
・・・ ××

(記入例2)
 借方(左)と貸方(右)を逆に記録する。
借方 金額 貸方 金額
受取利息 2 現金 2


貸借対照表・損益計算書を作るために、重要なのは正しく各勘定科目を集計することです。
だから、上記どちらの方法でも、一度決めたルールでずっと記入し、各勘定科目を正しく集計して、最後に、各勘定科目を適切に配置すれば、貸借対照表と損益計算書を作成することができます。

でも、一般的に決められたルールで仕訳すれば、以下のようなメリットがあります。
・仕訳の質問をしたり、書籍を理解したり、会計ソフトを使うことができるようになります。
・製造業などで原価計算を行う場合、仕訳から勘定図を書いたりすると理解が深まっていきます。
・決算書の分析、連結決算、法人税法の損益計算書(別表4)、貸借対照表(別表5(1))など幅広く理解することもできるようになります。
・慣れるまでは、借方(左)と貸方(右)はややこしいのですが、先ほど紹介したルールであれば、必ず借方(左)と貸方(右)が一致するので、ミス防止にもなります。複雑な取引になったとき分かりやすいです。必ず貸借が一致するので、先に分かる所から書いていくということもできます。


ということで、やはり、本ページで紹介しました方法を使っていただくのが良いと思います。



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