【図解】経理の原則
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このページの最終更新日:2022/09/06

第2章 損益計算書原則
(発生主義・実現主義・費用収益対応の原則)

このページの内容

企業会計原則は、一般原則、損益計算書原則、および、貸借対照表原則の3つで構成されています。
ここでは、損益計算書原則をご紹介します。



   

会計基準と個人事業主の確定申告の違い


現行の会計基準では、発生主義の原則、実現主義の原則、費用収益対応の原則に基づいて利益を計算することになっています。これを発生主義会計といいます。

個人事業主の確定申告も、基本的には会計基準と同じですが、課税公平の目的から、費用の範囲が狭く、細かい計算ルールなどが決められている点が異なります。

比較表は、以下の通りです。
会計基準 個人事業主の確定申告(所得税法)
発生主義の原則
→資産やサービスの消費時点で費用計上
 言い換えると、資産やサービスを使い終わったり手元からなくなって、価値がなくなった時点で、儲けの減少を認識するということです。
債務確定基準
→支払うべき債務が確定した時点で費用[必要経費]計上

※会計基準との違い
・債務確定基準より、貸倒引当金など一部の引当金しか計上が認められていません。
・減価償却方法など細かい計算方法が決められています。
実現主義の原則
→資産引渡しやサービス提供の完了時点で収益計上

→資産引渡しやサービス提供の完了時点で収益計上
売上に対応する費用計上 売上に対応する費用[必要経費]計上(所法37①)


ここからは、上記の会計基準の三原則についてご説明します。
  

発生主義の原則

発生主義の原則とは、収益計上は経済的価値の増加、費用計上は「経済的価値の消費」のタイミングで行うことです。

費用計上の「経済的価値の消費」というのは、資産やサービスの消費のことです。
具体的には、以下の通りです。


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物の購入・消費時の基本的な考え方は、下表のとおり、商品の仕入でも、消耗品の購入でも、固定資産(建物・備品・ソフトなど)でも、すべて同じです。ですから、必ず理解いただくとよいと思います。

基本的には上記の考え方ですが、資産によって仕訳のやり方が異なったり、資産の金額的な重要性が低ければ簡便な処理が認めらていたり、固定資産など資産の特性に応じて細かく計算方法が決めらています。混乱しやすいのでご注意ください。


物の購入における費用計上の基準と仕訳例の比較
以下は、右へスクロールできます
棚卸資産   固定資産
商品の仕入・売上
 
消耗品の購入
 
有形固定資産と無形固定資産の購入
(建物・備品・ソフトなど)
 
原則方法
仕訳例の違い
原則方法は、まず期中仕入計上して、
期末時に商品と費用(売上原価)を計上します(下図の三分法)。
原則方法は、まず期首と期中購入分を費用計上して、
期末時に資産計上します(下図)。

ですが、実務では、通常、例外処理の費用計上だけで完了です。
まず期中購入時に資産計上して、
期末時に費用(減価償却費)を計上します(下図)。
※基本的な考え方は同じですが、仕訳方法に違いがありますので混乱しないようにご注意ください。
-商品仕入と売上の仕訳 -三分法-
マウス置くと拡大 
-消耗品費(経費)と貯蔵品の仕訳 -【原則処理】購入時に消耗品費(費用)とする方法-
マウス置くと拡大 
-有形固定資産と無形固定資産の減価償却-
マウス置くと拡大 
法人の会計基準 当期消費分(=当期引渡し分)を費用計上
原則:当期消費分を費用計上
例外:重要性が乏しいものは、購入時または払出時に費用計上可。実務では、通常こちらです。
当期消費分を費用計上(減価償却という)。
有形固定資産を使用することにより、徐々に価値が低下します。そこで、有形固定資産の利用年数に渡って、その取得原価を各会計年度に費用配分します。

金額が大きく、消費具合が見えないので、細かく計算方法が決められています(減価償却といいます)。
例外:利用年数および取得価額に応じて、一括して、費用[必要経費]計上できる
個人事業主の確定申告
※基本的に法人と個人事業主の処理は同じです。
当期消費分(=当期引渡し分)を費用計上
原則:当期消費分を費用[必要経費]計上
例外:継続して費用[必要経費]計上などの要件を満たす場合は、購入時に費用計上可。実務では、通常こちらです。
当期消費分を費用計上(減価償却という)
金額が大きく、消費具合が見えないので、細かく計算方法が決められています(減価償却といいます)。
例外:利用年数および取得価額に応じて、一括して、費用[必要経費]計上できる






※収益計上について
通常の商品の販売やサービスの提供に関する収益計上については、確実性・客観性などが必要になることから、次の実現主義の原則が採用されることになります。
  

実現主義の原則

実現主義の原則は、以下2つの要件を満たした時に収益計上するルールです。
要件 要件が必要とされる理由
①資産引渡しやサービス提供の完了 確実性や客観性を確保するためです。
実際に販売するまでは、仕入れた商品が売れるか分かりません。また、事業主が予定した販売価格で売れるとも限りません。
②対価として現金・売掛金などの貨幣性資産の受取りが完了 利益の処分可能性を確保するためです。
株主への配当や税金を支払うためには、入金の見通しが必要になります。
もしも入金の見通しがないのに、株主への配当や税金を支払うと、お金を貸している銀行などが、資金回収できなくなるリスクが高まります。そこで、入金の見通しが立った時点で収益を計上することになります。

≪資産引渡しの具体的な時期について≫
これは、以下の通り、いくつか種類があります。
一度決定した計上基準は、継続して適用することが必要です。これは、企業会計原則の継続性の原則によるものです。
売上・仕入計上基準-個人事業主・法人の会計
売上計上基準 計上時期 (参考)仕入計上基準
出荷基準 店舗や倉庫から出荷したとき。物販業でよく適用されます。 発送基準
納品基準 納品したとき。 入荷基準
検収基準 検収が完了したとき。製造業者間の取引など、商品やサービスの品質などが重視される場合に採用されます。 検収基準
※仕入の計上基準も同様です( [例]仕入 ×× / 現金 ×× などの商品購入などの仕訳を起こすタイミング)。参考として、表の右側に記載しています。

具体的な処理や取引例は、【図解】商品仕入と売上の仕訳・帳簿づけページをご覧ください。


実現可能性による金融商品評価
上記の実現主義の原則に対して、現行の会計基準では、短期の売買目的で保有する上場株式が値上がりした場合には、実際に引渡しが完了していなくても、値上がり益を収益計上することになっています。これは、いつでも売却が可能であることから、容認されています。



         

費用収益対応の原則

費用収益対応の原則とは、収益に対応するように費用計上する原則です。

この対応には、次の2種類があります。
内容
個別的対応 売上と売上原価のように、直接的に対応すること。
⇒例えば、商品1個を売上げた場合、これに対応する1個分を費用計上して、損益計算することになります。
期間的対応 一会計期間の収益と費用を、期間を通じて間接的に対応させること
販売費及び一般管理費、広告宣伝費、水道光熱費、家賃などの費用項目については、売上との対応関係を結びつけるのは困難です。そのため、一会計期間の収益に対して期間対応させることになります。





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